新年度が始まり、職場でも懇親会が増える季節になりました。親睦を深める場は大切ですが、翌朝、真っ青な顔で出社する部下や、アルコール残りが原因と思われるミスが散見されると、人事労務としては「自己管理を」と言いたくなるものです。
飲酒による悪影響は根性論ではなく「正しい知識」を持ち工夫をすることで制御可能です。従業員が宴席を健康的に楽しみつつ、仕事のパフォーマンスを落とさないための「飲酒の科学」を解説します。
「昨日はビールを5杯以上飲んだし飲みすぎたな」といった肌感覚の基準でアルコールの量を管理するのはもう卒業しましょう。現代の健康管理の基準は、お酒の種類を問わず「純アルコール量(g)」で管理することです。
純アルコール量の把握
厚生労働省のガイドラインでは、生活習慣病のリスクを高める飲酒量を1日平均の純アルコール量で男性40g以上、女性20g以上と定義しています。ビール中瓶(500ml)1本に含まれる純アルコールは約20gです 。
「今日は20gまでにしよう」と数値で目標を決めることが、翌朝へのダメージを防ぐ第一歩です 。

チェイサーの効果
アルコールには利尿作用があるため、飲んだ水分以上の水分が尿として排出されます。脱水は二日酔いの原因になるため、お酒と交互にチェイサー(水)を飲むことが有効です。水を挟むことで飲酒のスピードが自然と落ち、アルコール摂取量が減る効果も期待できます。ただし、水を摂取することでアルコール分解速度が早まるわけではないため、摂取量そのものを減らすことが一番大切です。
アルコール自体のエネルギーも1gあたり7kcalと高めですが、それ以上に問題なのは「おつまみの選び方」と「体内の代謝スイッチ」です。
食物繊維とタンパク質を先に摂る
空腹での飲酒はアルコールの吸収を早め、酔いが回りやすくなるだけでなく、お酒に含まれる糖質による血糖値の乱高下を招きやすくなります。飲酒前にタンパク質や脂質を含んだ食事を摂ることで、胃の排泄速度が遅くなり、アルコールの血中濃度上昇が緩やかになるため、枝豆、豆腐、刺身など高タンパク・低脂質なおつまみから食べるのが「太らない」コツです 。
「締め」のラーメンが危険な理由
アルコールが分解されている間、肝臓で糖を消費するため一時的な低血糖状態になります。これが「飲んだ後に炭水化物が欲しくなる」正体です。しかし、ここでラーメンを摂取すると、インスリンの過剰分泌により脂肪として蓄積されやすくなります。従業員には「締めは我慢して水か温かいお茶」という習慣を啓発しましょう。
アルコールの影響には大きな個人差があります。これを無視した「みんな同じように飲む」文化は、もはやリスクでしかありません。
お花見や歓迎会を「単なる飲み会」で終わらせず、従業員一人ひとりが「自分の適量(純アルコール量)」と「正しい飲み方」を知る機会にしましょう。
適切な飲酒管理は、健康診断の結果改善だけでなく、メンタルヘルスの安定や、睡眠の質の維持にもつながります。
「お酒は百薬の長」というのは、実は今の医学では否定されています。特に「寝るためにお酒を飲む(寝酒)」習慣がある従業員には注意してください。アルコールは寝付きを良くしても、夜中の覚醒(中途覚醒)を増やし、睡眠の質を著しく下げます 。「翌日のパフォーマンスを最大化したいなら、寝る3時間前以降は飲まない」。これを現場の共通認識にするだけで組織の生産性は大きく変わるはずです。
厚生労働省. 健康に配慮した飲酒に関するガイドライン. 2024
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