ヘルスケア

社員のコレステロール対策!脂質異常症を防ぐ食事術と人事対応

作成日:2026年1月15日

はじめに

「コレステロール値が少し高いけれど、体調は悪くないから大丈夫」。人事労務担当者の皆様、健康診断の結果を見た従業員からこのような声を聞くことはありませんか?
脂質異常症は「サイレントキラー」と呼ばれ、自覚症状がないまま血管を静かに、そして確実に蝕んでいく非常に厄介な状態です。放置して自覚症状が出てからでは、すでに重篤な疾患を引き起こしていることも少なくありません。
本記事では、医学的根拠に基づき血管を守るための「引き算と置き換えの食事術」と、企業として実践できる組織的な健康サポートについてわかりやすく解説します。


1. 脂質異常症の3つの指標と放置するリスク

血液中の脂質のバランスが崩れた状態を「脂質異常症」と呼び、健康診断では主に以下の3つの数値をチェックします。

・LDL(悪玉)コレステロール:肝臓で作られたコレステロールを全身の細胞や血管に運ぶ役割があります。多すぎると血管の壁に溜まり、動脈硬化を引き起こす主要な原因となります。

・HDL(善玉)コレステロール:血管内の余分なコレステロールを回収する役割があります。この数値が少ないと、動脈硬化のリスクが高まります。

・中性脂肪(トリグリセライド):体を動かすためのエネルギー源ですが、多すぎる場合は動脈硬化を早めるだけでなく、極端に高い場合は急性膵炎などを招くリスクもあります。

LDLコレステロールが180mg/dL以上の人は、100mg/dL未満の人と比較して心筋梗塞や狭心症になるリスクが約3~4倍に跳ね上がるというデータもあります。「自覚症状がないから」と放置することがいかに危険であるかがわかります。

 

2. 血管を守る「引き算と置き換え」の食事術

脂質異常の改善は、単に「食べる量を減らす」ことではありません。血管を傷つける油を減らし、守ってくれる食材に「置き換える」ことが医学的にも推奨されています。

・飽和脂肪酸の「引き算」と「置き換え」:牛肉や豚肉の脂身、バターなどに含まれる「飽和脂肪酸」の摂取を減らし、魚や植物油に含まれる不飽和脂肪酸に置き換えることで、心血管疾患のリスクが有意に低下することが、システマティックレビューで証明されています。揚げ物や炒め物を減らす工夫が大切です。

・食物繊維の「足し算」:海藻、きのこ、野菜、未精製穀物(玄米やオートミールなど)に含まれる水溶性食物繊維は、腸内でのコレステロールの吸収を抑え、体外への排出を促す働きがあることが確認されています。日々の食事に積極的に取り入れることをおすすめします。

・卵などの摂取制限について:日本動脈硬化学会のガイドラインでは、高LDLコレステロール血症などの脂質異常症と診断された方は、コレステロールの摂取を1日あたり200mg未満(卵約1個弱に相当)に制限することが推奨されています。

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3. 人事労務ができる「組織的」なコレステロール対策

従業員個人の努力に任せるだけでなく、組織として脂質異常症を重症化させないための仕組みを整備していくことが大切です。

① 受診勧奨の徹底とフォローアップ
基準を超えたら迷わず受診へ:健診でLDLコレステロールが「180mg/dL以上」となった従業員には、自覚症状の有無にかかわらず速やかな医療機関の受診を推奨しましょう。放置による将来のリスクを丁寧に伝え、受診しやすい環境を整えることが企業の安全配慮に繋がります。

② 社内の食環境と運動習慣の見直し
健康的な選択肢の提供:社員食堂や社内のお弁当販売などで、赤身肉や魚料理、野菜の小鉢などの健康的なメニューを選択しやすくする工夫をおすすめします。また、「今よりも10分長く歩く」といった日々の運動習慣(プラス10)の啓発を衛生委員会等を通じて行うことも効果的です。


まとめ

脂質異常症の改善は数日で終わるものではなく、毎日の食事や生活習慣の「選択」の積み重ねです。「将来の心筋梗塞のリスクを今摘み取る」という視点を持ち、従業員が健康的な行動を選びやすい環境を組織全体で整えていくことが、企業の大切な人材を守る経営戦略となります。無理なく続けられる取り組みから、少しずつ進めていきましょう。

産業医からのワンポイントアドバイス

「コレステロール値が高いのは体質だから仕方ない」と諦めている従業員の方は少なくありません。しかし、食事の「質」を少し見直すだけで、数値が劇的に改善するケースを私は何度も見てきました。ポイントは「禁止」ではなく「置き換え」です。かつ丼を食べるなら和食定食に切り替えるなど、少し意識すればできそうな行動を提案してあげてください。厳しい禁止事項を設けて短期間で挫折するよりも、小さな健康行動を温かく後押しし継続してもらうことが、組織全体の健康リテラシー向上に繋がります。

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参考文献

・Hooper L, et al. Reduction in saturated fat intake for cardiovascular disease. Cochrane Database Syst Rev. 2020;8
・日本動脈硬化学会. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2022年版. 日本動脈硬化学会. 2022
・厚生労働省. 標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版). 厚生労働省. 2024

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