「主治医の診断書に『復職可能』と書いてあるので、すぐに元の部署でフルタイムで復帰させよう」と考えていませんか?
十分な準備なしにそのまま復帰させて短期間で再休職に陥ってしまうケースは、多くの企業が経験する「復職の罠」です。
今回は、再休職を防ぐための「リワーク(復職支援プログラム)」の重要性と、産業医と連携して安全な復帰ステップを作る方法を解説します。
主治医からの診断書「復職可能」は、あくまで「自宅で日常生活が問題なく送れるレベルに回復した」という意味であることがほとんどです。しかし、会社が求める「週5日、満員電車に乗り、8時間の業務をこなす」ための体力や集中力は、休職期間中に著しく低下しています。
骨折してギプスが外れたばかりの人に、いきなり「明日から全力疾走して」とは言わないのと同じように、不調からの復帰にも段階的な「リハビリ」が不可欠です。真面目な従業員ほど「早く遅れを取り戻さなきゃ」と焦って100%でやろうとした結果、心と体がついていかず再び心が折れてしまう危険性が高いのです。
リハビリプログラムの絶大な効果
復帰前のリハビリテーションの有効性について、研究結果により以下の事実が明らかになっています。
・リワークプログラム参加による再休職の予防効果:医療機関や公的機関が提供するリワーク(職場復帰支援プログラム)に一定期間参加して計画的に復帰した従業員は、参加せずにそのまま復帰した従業員と比較して、復職後の再休職率が有意に低く、長期的な就労継続率が高いことが研究で証明されています。

・認知機能とストレス対処スキルの回復:リワークプログラムを通じた疑似的なオフィス作業やグループワークは、休職によって低下した注意力や業務遂行能力(認知機能)を安全な環境で回復させます。また、再発の原因となるストレスへの対処スキルを身につけることができます。
「ただ家で休ませる」段階から一歩進み、「働くための基礎体力をつけさせる」ことが、確実な再発予防策なのです。
再休職を防ぐために、人事が産業医と連携して復職前に組み込むべきアクションを整理します。
① 「生活記録表」と「模擬通勤」の実施
客観的な回復の証明:復職の1ヶ月前頃から、出社時間に合わせた起床、実際の通勤経路での模擬通勤、図書館やカフェでのPC作業(模擬業務)を行わせます。これらを記録した「生活記録表」を産業医面談の際に提出してもらうことで、「業務に耐えうる生活リズムが整っているか」を客観的に評価できるようになります。
② 外部のリワーク施設や「お試し出勤」の活用
段階的な負荷の引き上げ:自社で復職プログラムを組むのが難しい場合は、地域障害者職業センターや医療機関が実施するリワーク支援の活用を促しましょう。また、制度として可能であれば、正式な復職前に短時間だけ出社するリハビリ出勤を導入することも有効です。
③ 復帰時は「7〜8割」のパフォーマンスを上限とする
産業医による就業制限の活用:復職直後から100%を求めてはいけません。産業医面談を通じて「最初の1ヶ月は残業禁止、1日6時間の時短勤務」といった就業制限を明確にかけましょう。現場の管理職にも「最初は時間通りに出社して座っているだけで100点満点」という認識を共有してもらうことが重要です。
復職は「ゴール」ではなく、就労継続に向けた「新たなスタート」です。リワークなどの復職支援プログラムと産業医の就業制限を適切に組み合わせ、焦らず段階的に復帰させる仕組みを作りましょう。復職支援体制の構築にお悩みの際は、お気軽に弊社へご相談ください。
「早く戻らないと会社に迷惑がかかる」と真面目な社員ほど復帰を焦ってしまいます。人事担当者の皆様からは面談の際に、「完全に元の状態に戻るには、復帰後も3ヶ月から半年はかかるのが普通だよ。体調の波があって当然だから、ゆっくりペースを上げていこうね」と、焦りを解きほぐす言葉をかけてあげてください。その一言が、従業員の心を軽くします。
・Nieuwenhuijsen K, et al. “Interventions to improve return to work in depressed people. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2020
・厚生労働省. 「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」.
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