人事向け健康経営

【再休職を防ぐ】リワークの有効性と人事の復職支援・産業医連携

作成日:2026年2月9日

はじめに

「主治医の診断書に『復職可能』とあるので、すぐに元の部署でフルタイム復帰させよう」。人事労務担当者の皆様、このような対応をされていませんか?十分な準備なしにそのまま復帰させ、短期間で再休職に陥ってしまうケースは、多くの企業が経験する「復職の罠」です。
本記事では、再休職を防ぐための「リワーク(復職支援プログラム)」の医学的な重要性と、産業医と連携して安全な復帰ステップを作る実践的な方法についてわかりやすく解説します。


1. いきなりのフルタイム復帰は「ギプスが外れてすぐの全力疾走」と同じ

主治医からの診断書にある「復職可能」は、あくまで「自宅での日常生活が問題なく送れるレベルに回復した」という意味であることがほとんどです。しかし、会社が求める「週5日、満員電車に乗り、8時間の業務をこなす」ための体力や集中力は、休職期間中に著しく低下しています。
骨折してギプスが外れたばかりの人に、いきなり「明日から全力疾走して」とは言わないのと同じように、メンタル不調からの復帰にも段階的なリハビリが不可欠です。真面目な従業員ほど「早く遅れを取り戻さなければ」と焦って100%で頑張ろうとした結果、心と体がついていかず再び心が折れてしまう危険性が高いのです。

 

2. 医学的根拠:リワーク(復職支援)が再休職率を劇的に下げる

リハビリプログラムの絶大な予防効果
復帰前のリハビリテーションの有効性について、システマティックレビュー等の研究結果から以下の事実が明らかになっています。

・リワークプログラム参加による再休職の予防効果:医療機関や公的機関が提供するリワーク(職場復帰支援プログラム)に一定期間参加して計画的に復帰した従業員は、参加せずにそのまま復帰した従業員と比較して、復職後の再休職率が有意に低く、長期的な就労継続率が高いことが研究で証明されています。

・認知機能とストレス対処スキルの回復:リワークプログラムを通じた疑似的なオフィス作業やグループワークは、休職によって低下した注意力や業務遂行能力(認知機能)を安全な環境で回復させます。また、再発の原因となるストレスへの対処スキルを身につけることが期待できます。

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3. 人事労務ができる「組織的」な安全な復帰ステップの作り方

再休職を防ぐために、人事が産業医と連携して復職前に組み込んでおきたいアクションを整理します。

① 「生活記録表」と「模擬通勤」の実施
客観的な回復の証明:復職の1ヶ月前頃から、出社時間に合わせた起床、実際の通勤経路での模擬通勤、図書館やカフェでのPC作業(模擬業務)を行ってもらうことをおすすめします。これらを記録した「生活記録表」を産業医面談の際に提出してもらうことで、「業務に耐えうる生活リズムが整っているか」を客観的に評価できるようになります。

② 外部のリワーク施設や「お試し出勤」の活用
段階的な負荷の引き上げ:自社で復職プログラムを組むのが難しい場合は、地域障害者職業センターや医療機関が実施するリワーク支援の活用を促しましょう。また、制度として可能であれば、正式な復職前に短時間だけ出社する「リハビリ出勤(お試し出勤)」を導入することも有効な手段の1つです。
※会社の規定によって対応の可否は変わるため注意が必要です。

③ 復帰時は「7〜8割」のパフォーマンスを上限とする
産業医による就業制限の活用:復職直後から100%の働きを求めてはいけません。産業医面談を通じて「最初の1ヶ月は残業禁止、1日6時間の時短勤務」といった就業制限を明確にかけていきましょう。現場の管理職にも「最初は時間通りに出社して座っているだけで100点満点」という認識を共有してもらうことが重要です。


まとめ

復職は「ゴール」ではなく、就労継続に向けた「新たなスタート」です。リワークなどの復職支援プログラムと産業医による就業制限を適切に組み合わせ、焦らず段階的に復帰させる仕組みを作っていくことが、再休職を防ぐ最も確実な経営戦略となります。復職支援体制の構築にお悩みの際は、一人で抱え込まず専門家へご相談されることをおすすめします。

産業医からのワンポイントアドバイス

「早く戻らないと会社に迷惑がかかる」と、真面目な社員ほど復帰を焦ってしまいます。人事担当者の皆様からは面談の際に、「完全に元の状態に戻るには、復帰後も3ヶ月から半年はかかるのが普通ですよ。体調の波があって当然だから、ゆっくりペースを上げていきましょうね」と、焦りを解きほぐす言葉をかけてあげてください。その温かい一言が、従業員の心を軽くし、結果としてスムーズな復帰に繋がります。

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参考文献

・Nieuwenhuijsen K, et al. Interventions to improve return to work in depressed people. Cochrane Database Syst Rev. 2020;10
・厚生労働省. 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き

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