「目が重い」「夕方になると画面がかすむ」「肩こりや頭痛がひどい」。パソコンやスマートフォンが手放せない現代の職場において、こうした「デジタル眼精疲労(情報機器作業による不調)」を訴える従業員は後を絶ちません。単なる疲れ目と放置していると、業務効率の低下や思わぬメンタル不調に繋がる恐れがあります。
本記事では、厚生労働省の最新ガイドラインや研究結果に基づき、本当に効果のある「目を守る対策」と、人事が主導すべき環境づくりについてわかりやすく解説します。
私たちの目が疲れる最大の理由は、目を酷使する「環境」にあります。主に以下の2つの要因が眼精疲労(ドライアイやかすみ目)を引き起こしています。
・ピントを合わせ続ける「筋肉の疲弊」:近くの画面をじっと見続けるとき、目の中の「毛様体筋」という筋肉は常に緊張し続けています。これは腕で例えれば「重い荷物をずっと持ち上げ続けている」のと同じ状態です。この筋肉のオーバーワークが眼精疲労の正体です。
・激減する「瞬き」とドライアイ:通常、人は1分間に約15〜20回のまばたきをしますが、画面に集中するとその回数は1/3程度(約5〜6回)まで激減します。瞬きが減少することで涙が蒸発して目の表面が乾燥し、かすみや痛みを引き起こします。
ブルーライトカット眼鏡の効果と視力矯正の重要性
眼精疲労対策として様々なグッズや手法が謳われていますが、医学的な研究結果から本当に重要なアプローチが見えてきます。
・ブルーライトカット眼鏡の効果は限定的:眼精疲労を防ぐためにブルーライトカット眼鏡を導入する方が増えていますが、研究結果によれば標準的なレンズと比較して、ブルーライトカットレンズが眼精疲労の軽減や睡眠の質の向上に明確な効果をもたらす証拠は現時点では不十分であると報告されています。
・適切な「度数」の眼鏡・コンタクトの重要性:機能性レンズに頼るよりも、まずは今の自分の視力と「作業距離(40〜50cm)」に合った度数になっているかを確認することが重要です。合わない度数で無理にピントを合わせようとすることが、目の筋肉を疲弊させる最大の隠れた原因となっています。
職場の健康管理でお悩みなら
厚生労働省の「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」に基づき、現場で実践できる環境づくりの鉄則を整理します。
① 適切な「明るさ」と「グレア防止」の徹底
オフィス環境の最適化:暗い部屋での作業は瞳孔が開き、ピント調節に負担をかけます。机上の照度は「300ルクス以上」を確保し、画面と書類の明暗差を少なくしましょう。また、画面に照明や太陽光が映り込む「反射(グレア)」は目の疲労を倍増させるため、ブラインドの活用やモニターの角度調整を推奨します。
② モニターとの「距離」と「視線」のガイドライン化
正しい作業姿勢の啓発:画面から目は「40cm以上」離すよう指導しましょう。また、画面の上端が「目の高さ」かそれよりやや下にくるようにモニターを設置します。少し伏せ目になる角度に設定することで、まぶたが下がり、涙の蒸発を効果的に抑えることができます。
③ 「1時間・10分」の休息ルールの仕組み化
小休止を促す文化づくり:ガイドラインで推奨されている「1時間の連続作業につき、10〜15分の休止時間」を意識づけることが大切です。また、連続作業の合間にも1〜2分程度の「小休止」を挟み、遠くを眺めて目の筋肉を緩めるよう、社内報などで啓発していきましょう。
眼精疲労が蓄積すると、イライラや抑うつ、睡眠障害といったメンタルヘルスの不調にも繋がることが指摘されています。「目が疲れた」という部下の訴えは、脳や体が休息を必要としているサインです。人事労務としては、個人の対策に委ねるだけでなく、デスク環境のチェックや適切な休憩を推奨する組織的な文化作りを主導していきましょう。
皆様は「20-20-20の法則」をご存知でしょうか?アメリカ眼科学会議が推奨するもので、「20分ごとに、20フィート(約6メートル)先を、20秒間眺める」という簡単な習慣です。アラームをセットしたり、会議の合間にチーム全体で「少し遠くを見る時間」を作ってみるのも面白い対策になります。手軽に実践できるセルフケアから、ぜひ社内に広めてみてください。
産業医の選任・見直しをご検討
・Singh S, et al. Blue-light filtering spectacle lenses for visual performance, sleep, and macular health in adults. Cochrane Database Syst Rev. 2023;8(8):CD013244.
・厚生労働省. 情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン. 2019
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