産業医

オンライン産業医面談は万能じゃない?対面との使い分けで防ぐリスク

作成日:2026年8月17日

はじめに

最近は当たり前になったテレワークやオンライン会議。産業医面談もオンラインで行うことが増えています。
オンライン面談は非常に便利で面談のハードルを下げる素晴らしいツールですが、「すべてをオンラインで完結させる」ことには、実は大きなリスクが潜んでいます。
今回は、画面越しで見落としやすい危険なサインと、従業員を守るためのオンラインと対面の使い分けについて解説します。


1. 画面越しでは見えない?オンライン面談に潜む「情報の死角」

オンライン面談では、カメラに映る「顔の表情と声」しか情報がありません。しかし、産業医が面談を行う際、それ以外の「非言語情報」からも非常に多くのサインを読み取っています。
例えば、対面であれば入室時の「歩き方」や「表情」、あるいは「匂い」などから、心身不調の兆候を察知できます。また、画面外で貧乏ゆすりをしていたり、手が小刻みに震えていたりするサインも、オンラインでは死角になりやすく、深刻なサインを見落とす(過小評価してしまう)リスクがあるのです。

 

2. オンラインの有効性と限界

研究結果が示す「ハイブリッド型」の重要性
メンタルヘルスケアやオンラインの有効性について、複数の研究結果により以下の事実が明らかになっています。

・オンラインの強みは「継続性」と「アクセスの良さ」:精神疾患の経過観察や軽度のストレス相談においては、オンライン面談は対面面談と同等の効果(不安の軽減やサポート感の向上)が得られることがわかっています。出社する負担がないため、面談キャンセル率が下がるというメリットもあります。

・初回の診断や「高リスク」の評価には対面が不可欠:一方で、重症度の高い患者や「休職・復職」などの重大な判断を下す場面においては、オンラインのみの評価では情報が不足し正確な医学的評価の精度が落ちる可能性が指摘されています。

つまり、オンラインは万能な代替手段ではなく、「対面と組み合わせることで真価を発揮するツール」であるといえます。

 

3. 人事労務が作るべき「面談の使い分け」

労災や休職トラブルのリスクを減らすため、人事が設定すべき面談の使い分け基準を整理します。

① 「対面」を原則とすべきケース
直接の観察が必要な場面「休職の要否」や「復職判定」など、今後の就業に直結する重要な判断を行う面談は、原則として対面で行うルールにしましょう。また、長時間労働で疲労困憊している社員や、周囲から見て明らかに様子がおかしい(ハイリスクな)社員の初回面談も、全身状態を観察できる対面が適しています。

② 「オンライン」を活用すべきケース
継続的なサポートの場面:復職後の「定期的なフォローアップ」や、フルリモートで働いており大きな不調サインがない社員の「ライトな健康相談」にはオンラインを積極的に活用しましょう。早期にSOSを拾い上げるための「窓口」としては非常に有効です。

③ オンライン実施時の「環境(プライバシー)」の確保
心理的安全性の担保:オンライン面談を設定する際、必ず「カフェや共有スペースではなく家族にも会話が聞こえない個室から繋ぐこと」を社員に徹底させてください。背後に人がいる環境では、本音や不調を引き出すことは絶対にできません。


まとめ

オンライン面談は非常に強力なツールですが、産業医の「五感を使った診察」を完全に代替することはできません。
「対面」と「オンライン」の特性を理解し、状況に応じて正しく使い分ける仕組みづくりが、企業の安全配慮義務を果たす鍵となります。
面談体制の構築にお悩みの際は、お気軽に弊社へご相談ください。

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産業医からのワンポイントアドバイス

オンライン面談の際、従業員が「カメラをオフ」にして参加しようとすることがあります。しかし、顔色や視線の動きが見えない音声のみの面談では、健康状態の評価は極めて困難です。人事担当者の皆様からは、面談案内の時点で「健康状態を正しく確認するため、必ずカメラはオンで参加してくださいね」と、事前のアナウンスを忘れずに行うようお願いいたします。

参考文献

・Hubley S, et al. “Review of key telepsychiatry outcomes. 2016;6

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