「ストレスチェックで高ストレス者から面談の申し出があったけれど、産業医に話を聞いてもらって本人の気が楽になればいいな」と考えている人事労務担当者の方もいるかもしれません。しかし、産業医による高ストレス者面談は、単に悩みを聞くだけの場ではなく、従業員が安全に働き続けられるかを判断し、企業に環境改善を促すための重要なリスクマネジメントの機会なのです。
本記事では、面談の裏で産業医が何を評価しているのか、面談結果を人事がどう活かしていくべきかをわかりやすく解説します。
高ストレス者面談の最も大きな目的は、「この従業員は、今の業務を今のままのペースで続けても倒れないか(就業可能か)」を医学的に評価することにあります。
面談において、産業医は従業員の不満や悩みを傾聴するだけでなく、睡眠障害や食欲不振といった「身体的・精神的なSOSサイン」が出現していないかを客観的な視点で判断しています。もし抑うつ状態などが疑われる場合は速やかに専門医への受診を促し、職場環境に根本的な原因(過重労働やハラスメントなど)がある場合は、会社に対して業務量の調整や配置転換を求めるための情報を整理しているのです。
ストレスチェックは、①仕事の負担(量・質)、②仕事の裁量度(コントロール)、③周囲のサポート、という3要素のバランスを測定しています。このバランスが崩れることの危険性について、研究結果をご紹介します。
・要求度が高く、裁量が低い職場の危険性:「仕事の要求度(ノルマやプレッシャー)」が非常に高いにもかかわらず、「裁量権(自分で仕事の進め方を決める権利)」が低い状態で働き続けると、うつ病などの精神疾患の発症リスクが有意に上昇することがわかっています。
・周囲のサポート不足がリスクを加速させる:さらに、上司や同僚からのサポートが得られない環境下では、心血管疾患(心筋梗塞など)のリスクまでもが上昇することが確認されています。高ストレス者面談は、こうした健康リスクが限界になる前に産業医が介入し、ストップをかけるための大切な機会となります。
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面談が終わった後、産業医から提出される「意見書」を企業としてどう受け止め、活かしていくべきか、具体的なアクションを整理します。
① 産業医の意見に基づく「環境調整」の実行
就業制限の遵守:産業医から「残業の制限」や「深夜業務の免除」といった就業上の措置意見が出た場合、人事は現場の管理職と連携し、速やかに業務量を調整することをおすすめします。こうした意見に対応せず不調が悪化した場合、企業の安全配慮義務違反が問われるリスクが高まります。
② プライバシーの保護と「できること」へのフォーカス
病状ではなく業務遂行能力で語る:人事が現場の管理職へ配慮を依頼する際、面談で本人が語った悩みや病状をそのまま伝える必要はありません。「現在の体調では夜間の対応は難しいため、日中の業務に専念させてください」といった具合に、「何ができて、何ができないか」という業務ベースの配慮事項に変換して伝えることがポイントです。
③ 集団分析結果を活用した「組織の改善」
個人の問題で終わらせない:特定の部署から高ストレス者が連続して出ている場合、それは個人のストレス耐性の問題ではなく「組織の構造的な問題」である可能性があります。ストレスチェックの集団分析結果を経営陣と共有し、人員配置や業務フローの抜本的な見直しに繋げていきましょう。
ストレスチェックの高ストレス者面談は、休職や労災という最悪の事態を防ぐための重要なシステムです。産業医の判断を正しく理解し、現場の環境改善に繋げることで、組織全体の生産性を守っていきましょう。面談後のフォローアップ体制や職場環境の改善にお悩みの際は、ぜひ前向きに産業医の活用をご検討ください。
高ストレス者と判定されても、「面談を申し出たら評価に影響はないか」「上司に内容を知られるのではないか」と恐れ、面談を希望しない従業員は少なくありません。ストレスチェックの実施や面談の案内時には、「面談内容は守秘義務で守られること」「面談を受けたことで不利益な評価を受けることは法律で禁止されていること」の2点を、何度でも繰り返しアナウンスしてあげることをおすすめします。その安心感が、従業員のSOSを拾い上げる一番の鍵になります。
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▼【動画解説】
・厚生労働省. 労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル.
・Stansfeld S, Candy B. Psychosocial work environment and mental health-a meta-analytic review. Scand J Work Environ Health. 2006;32(6):443-462.
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