「主治医から復職許可が出たので現場に復帰したのに、数ヶ月でまた休職してしまった…」 人事労務担当者の皆様、現場でこのような経験はありませんか?
メンタルヘルスの不調からの復帰は、単に体調が良くなったからとすぐに元の業務に戻れるほど単純なものではありません。
今回は、産業医のリアルな知見に基づき、再休職を防ぐための「復職面談のポイント」と、人事が知っておくべき「段階的復帰の正しいステップ」を解説します。
復職トラブルで最も多い原因が、「主治医の診断書」に対する認識のズレです。主治医の診察は通常10〜15分程度であることも多く、従業員が職場でどのような人間関係の中にいて、どれほどの業務負荷を抱えているかまで詳細に把握することは困難です。
主治医が判断する「復職可能」は、あくまで「日常生活が問題なく送れるレベルに回復した」という意味合いが強く、会社側が求める「業務を遂行できるレベル(体力や集中力)」とはギャップがあるのが実情です。だからこそ、職場の実態や業務特性を理解している「産業医」による復職面談が必須となるのです。
職場主導の介入の有効性:医療機関での治療(服薬やカウンセリングなど)だけでなく、「産業保健スタッフ(産業医など)との連携」「段階的な復帰プランの作成」「業務内容の調整」といった職場側からの積極的な介入を組み合わせることで、休職日数が有意に短縮され、「より早期の復職」に繋がることが証明されています。
※ただし、この研究では1年後の中長期的な就業率に有意差は確認されておらず、復職後も「再休職させないための継続的なフォロー」が不可欠であることも示唆されています。
認知行動療法的アプローチ(リワーク)の効果:休職中に復職を見据えた「リワークプログラム(復職支援プログラム)」を活用し、物事の捉え方やストレス対処法を学ぶことが、次に休職するまでの期間を延ばす(再発を遅らせる)効果があることも確認されています。
つまり、復職を成功させるには「病院任せ・本人任せ」にするのではなく、企業と産業医がタッグを組み、組織的に環境を整えることが医学的にも最も正しいアプローチなのです。
メンタル不調からの復職における判断の難しさを解消し、現場の混乱を防ぐため、人事が主導すべきアクションを3つのステップで整理します。
① 「通勤訓練」による見えない疲労の可視化
実際の通勤ルートの体験:復職面談の前に、実際の出社時間に合わせて電車に乗ってもらいます。日常生活は送れていても、通勤のストレスで腹痛などの症状が再発するようであれば、まだ復職のタイミングではありません。
カフェ等での擬似作業:会社の近くで数時間作業を実施してもらい、業務に耐えうる集中力や体力が戻っているかを客観的に確認します。
② テレワーク復帰における「期限」の設定
原則は出社からの復帰:テレワークは上司の目が届きにくく、実は体調を崩して横になっていても気づけません。正しく健康状態を評価するためにも、原則は出社できる状態まで回復してからの復帰が望ましいです。
特例の場合は期間を区切る:「週2日だけ在宅」などを特例で許可する場合は、必ず「最初の1ヶ月限定」など期限を決めてください。際限なく認めると周囲の不公平感を生み、組織の士気低下につながります。
③ 復職後「半年間」の徹底したフォローアップ
定期的な面談の実施:復帰して終わりではありません。最初の半年間は1〜2ヶ月に1回のペースで産業医面談や人事面談を継続し、早期に不調のサインに気づく体制を作りましょう。
配慮事項の出口戦略:残業禁止などの配慮事項も、「いつまで適用し、いつ通常勤務に戻すか(または再休職とするか)」というスケジュールを事前に明確に決めておくことが重要です。
メンタル休職からの復帰は、本人の焦りや現場の期待が交錯し、判断を見誤りやすいデリケートなタイミングです。主治医の診断書を鵜呑みにせず、会社・人事・産業医が連携して「本当に働ける状態か」を見極め、適切に環境を調整することが再休職を防ぐ唯一の道です。復職判定の難しさや、具体的な制度設計にお悩みの際は、復職支援のプロである産業医へお任せください。
▼【社内周知・人事向け】産業医面談って何するの?復職面談の裏側を産業医が解説!
https://youtu.be/F-bHIbLH7Bc?si=fc4xkBl_dcDza5aX
人事担当者の皆様は、従業員から「どうしても在宅で復帰したい」「まだ体調が不安なので配慮期間を延ばしてほしい」と強く要望されると、現場との板挟みになって悩まれることが多いと思います。そんな時こそ、産業医を「医学的見地から客観的にストップをかける悪役」としてうまく使ってください。「産業医がまだ早いと判断したので」と伝えることで、角を立てずに適切な復職ステップを踏ませることができます。
・Nieuwenhuijsen K, et al. “Interventions to improve return to work in depressed people.
・厚生労働省. 「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」
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