健康経営

【健康診断】血圧・血糖・脂質の絶対受診ラインと人事の事後措置ガイド

作成日:2025年9月30日

はじめに

「健康診断で要精密検査になった従業員に受診を促しても、忙しさを理由に行ってくれない」。人事労務担当者の皆様、このようなお悩みはありませんか?
本記事では、各学会のガイドラインに基づき「この数値を超えたら必ず受診が必要」となる具体的な基準値と、人事が取るべき組織的な事後措置のステップをわかりやすく解説します。


1. 健診結果の「基準値」と「受診勧奨値」の違い

健診結果に記載されている「基準値」は、“健康な人の95%が入る範囲”という統計的な目安にすぎません。一方で、医学的な診断や治療の介入が必要となるラインは「臨床判断値(受診勧奨値)」と呼ばれます。
人事担当者が従業員の健康リスクを正しく把握し、突然のトラブルを防ぐためには、単なる基準値からのズレではなく、この「受診勧奨値」を基準に対応を進めていくことが大切です。

 

2. 放置NGの「絶対受診」ライン

血圧、血糖、脂質の異常は自覚症状がないまま進行し、放置すると脳卒中や心筋梗塞といった致死的な疾患のリスクを有意に高めることが多くの研究で示されています。各学会のガイドラインに基づく、介入が必要な受診ラインをご紹介します。

・血圧:160/100以上はすぐに受診:収縮期160mmHg以上、または拡張期100mmHg以上は速やかな医療機関の受診目安です。140〜159/90〜99の範囲であっても、生活改善を試みて変化がなければ受診が推奨されます。受診の際は、1週間分の家庭血圧(朝夕)を記録して持参することで、治療方針の決定がスムーズになります。

・血糖:空腹時126 mg/dL または HbA1c 6.5%以上:どちらか一方でも超えていれば「糖尿病型」と判定され、速やかな受診が推奨されます。初期段階での生活指導(食事・運動)や治療介入が、将来的な合併症(腎症・網膜症・神経障害など)の未然防止に極めて有効です。

・脂質(LDL):180 mg/dL以上は要治療:LDL(悪玉コレステロール)が140以上の場合は受診勧奨の目安となりますが、180以上の場合は若年層でも動脈硬化が進みやすい「家族性高コレステロール血症(FH)」が強く疑われます。早期の診断と治療介入が非常に重要となります。

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3. 人事労務ができる「組織的」な事後措置のステップ

健診結果を「受けっぱなし」にせず、企業として従業員の健康を守るための具体的なアクションを整理します。

① 個別のアプローチと懸念の払拭
自覚症状がない層への丁寧な声かけ:上記の基準値を超えている従業員へ個別に受診を促します。「忙しい」「症状がない」と後回しにする方へは、無症状でも動脈硬化が進行するリスクや、生活改善が難しい多忙な状況だからこそ、早期の医療介入が役立つことを伝え、受診しやすい環境を整えていきましょう。

② 産業医面談と就業配慮の連携
専門家によるフォローアップ:数値の異常が著しい場合や、どうしても受診をためらっている場合は、産業医面談を設定することをおすすめします。医学的な見地から現在の働き方に問題がないか確認し、必要に応じて就業配慮(残業制限や出張の制限など)を行い、従業員が安全に働ける体制を構築します。


まとめ

健康診断は「受けて終わり」ではなく、結果をもとに適切な行動を起こす出発点です。血圧・血糖・脂質といった自覚症状のない項目こそ、組織的な声かけと受診サポートが、従業員の命や大切なキャリアを守る鍵となります。従業員が安心して長く働けるよう、人事労務と産業医がしっかりと連携し、早期対応を称賛する文化を社内に育てていきましょう。

産業医からのワンポイントアドバイス

人事担当者の皆様は、従業員に対して「病院に行ってください」と伝えることに心理的なハードルを感じられるかもしれません。特に働き盛りの従業員は「まだ若いから大丈夫」「薬を始めたら一生やめられないのでは」と不安を抱きがちです。そんな時こそ、私たち産業医をうまく頼ってみてください。第三者である専門の医師から直接、将来のリスクや「状態が良くなれば薬を減らせる可能性もある」といった正しい情報をお伝えすることで、従業員も納得して前向きに受診行動へ移しやすくなります。一人で抱え込まず、一緒に従業員の健康を守る仕組みを作っていきましょう。

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参考文献

・厚生労働省. 標準的な健診・保健指導プログラム 令和6年度版.
・日本高血圧学会. 高血圧治療ガイドライン2019.
・日本糖尿病学会. 糖尿病診療ガイドライン2024.
・日本動脈硬化学会. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版

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