ヘルスケア

夏日が増える5月。産業医が教える、早めの熱中症対策

作成日:2026年5月20日

はじめに

「まだ5月だから、熱中症なんて先の話だろう」 人事労務担当者の皆様、現場でこのような油断はありませんか?
実は、1年の中で熱中症のリスクが急激に高まるのは、私たちの体はまだ「夏の準備」ができていない今(5月)なのです。
今回は、最新の医学的エビデンスに基づき、なぜ5月の熱中症が危険なのか、そして企業が今すぐ取り組むべき「攻め」の予防策を解説します。

 

1. 5月の熱中症が最も危ない理由:「暑熱順化」の遅れ

5月に熱中症が頻発する最大の原因は、「暑熱順化」ができていないことにあります。暑熱順化とは、体が暑さに慣れ、効率よく汗をかいて体温を調節できるようになる変化のことです。
冬から春にかけて低い気温に慣れていた体は、5月の急な夏日(25℃以上)に対応できません。汗をかくのが遅れ、体内の熱を逃がせないまま深部体温が上昇し、気づかないうちに脱水やめまいを引き起こします。

 

2. 医学的根拠:暑熱順化には「1〜2週間」が必要

順化によるリスク低減効果
最新の研究によれば、適切な暑熱順化プログラム(1日60〜90分の適度な暑さへの暴露)を1〜2週間継続することで、以下の生理的適応が起こることが確認されています。

      • 発汗開始の早期化:より低い体温から汗をかき始める。
      • 発汗量の増加と塩分喪失の抑制:効率よく体を冷やしつつ、ミネラルを温存する。
      • 血漿(けっしょう)量の増加:体を巡る血液の量が増え、心臓が効率よく働くことができ負担が軽減される。

この「2週間の準備期間」がないまま猛暑日に突入することが、5月の救急搬送者急増の正体です。

 

3. 人事労務ができる「組織的」な熱中症対策

現場の熱中症を防ぐため、人事・管理職が主導すべきアクションを3つのステップで整理します。
① 「暑熱順化期間」の設定と教育
軽い運動の推奨:ウォーキングや入浴(湯船に浸かる)などで、じわりと汗をかく機会を増やすよう従業員に啓発します。
教育動画の活用:熱中症は「正しい知識」があれば防げる病気です。ガイドラインに基づいた最新の予防法を社内周知しましょう。

② 環境の「見える化」と早期介入
WBGT(暑さ指数)の測定:気温だけでなく、湿度や輻射熱を考慮したWBGT値を基準に休憩時間を調整してください。
水分・塩分補給の仕組み作り:口渇感(のどの渇き)を感じた時点ですでに脱水は始まっています。時間を決めた「強制給水」の時間を設けるなど、仕組みで解決しましょう。

③ 朝食欠食のチェック
朝食を抜くことは熱中症リスクを著しく高めます。朝食は、午前中の活動に必要な水分と塩分の貴重な補給源です。特に5月の連休明けなど、生活リズムが乱れやすい時期は、朝食摂取の重要性を改めて呼びかけることが、地味ながら強力な予防策となります。

 

4. まとめ:熱中症は「事前の準備」で発生リスクを下げる

熱中症というと7-8月をイメージしますが、5月の今、もうすでにリスクは高まり始めています。暑熱順化という「体の準備」を組織的にサポートすることで、夏本番の労働災害ゼロ、そして従業員のパフォーマンス維持をしましょう。

▼【社内周知用】室内でも警戒!初期症状から簡単にできる対策を産業医が解説!
https://youtu.be/0bZG_BwrXYY?si=c-hffYe1s3Law2Me

産業医からのワンポイントアドバイス

熱中症対策でよくある失敗が、「のどが渇いてから飲む」という指導です。 のどの渇きを感じる段階では、すでに体重の1〜2%の水分が失われており、パフォーマンスは低下しています。
人事担当者の皆様からは、「のどが渇く前に、一口でいいから水を飲もう」という具体的な合言葉を現場に浸透させてください。その「一口」の積み重ねが、従業員の命を守ることになります。

参考文献

  • 日本救急医学会. 「熱中症診療ガイドライン 2024」
  • 厚生労働省. 「熱中症予防のための指標:WBGT」
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