3月・4月は「環境変化」と「業務負荷」が重なりメンタル不調のリスクが増加し、メンタルヘルスにとっては「一年で最も危険な季節」でもあります。退職者が出ることによる業務量の増加、頼れる上司の異動によるサポートの喪失、そして新しい環境への適応不安など。今回は、人事労務担当者が現場の管理職に周知すべき、この時期特有の「メンタル不調の5つのサイン」と対策について解説します。
産業保健において、職場のストレスを軽減する最も重要な要素の一つが「上司・同僚の支援(社会的サポート)」です。親しい同僚の退職や理解ある上司の異動は、この「心のサポート」が突然失われることを意味します。
残された従業員は業務負担が増えるだけでなく、「相談相手がいなくなる」という孤独感から、急速にメンタル不調に陥るケースが後を絶ちません。

不調を早期発見するために高度な診断能力は不要です。重要なのは「いつもと違う変化」に気づくことです。チェックリストとなる5つのサインを解説します。
サイン①【勤怠】「朝」のリズムが崩れる
最も分かりやすいサインです。遅刻が増える、突発的な有休(当日欠勤)が増える、これまでなかった無断欠勤が発生するなど。これらは睡眠障害や出勤前の憂鬱感の表れである可能性が高いです。
サイン②【能力】「ミス」と「停滞」が増える
脳の機能が低下すると集中力や判断力が鈍ります。単純なミスを繰り返す、業務に時間がかかるようになる、仕事を抱え込むようになるといった変化に注意してください。
サイン③【行動】「会話」が極端に変化する
報告・連絡・相談(ホウレンソウ)が激減する、挨拶をしなくなる、視線を合わせなくなるといった変化や、逆に不自然なほど多弁になることもあります。
サイン④【外見】「身だしなみ」が乱れる
意欲が低下すると自分自身への関心が薄れます。服装がだらしなくなる、髪型やメイクが乱れる、表情が暗くなるといった変化は重要な指標です。
サイン⑤【感情】「感情のコントロール」ができなくなる
些細なことでイライラしたり、ため息が増えたり、情緒不安定になり急に泣き出したりすることがあります。
サインを見つけた時、管理職が絶対にしてはいけないのが「叱責」や「安易な励まし」です。
以下の手順での対応を指導してください。
STEP1:事実を伝えて「聴く(傾聴)」
「最近ミスが多くやる気はあるのか?」と責めるのはNGです。「最近、遅刻が増えているようだけど(事実)、眠れていないのではないかと心配している(配慮)」という「アイ(I=私)メッセージ」で切り出し、まずは話を否定せずに聴いてください。
STEP2:抱え込まずに「つなぐ」
管理職の役割は治療することではありません。専門家である産業医や人事につなぐことがゴールです。特に異動直後は言い出せない従業員が多いため、上司から水を向けることが重要です。
「退職・異動」に伴う混乱は、業務上の課題であると同時に、健康上のハイリスク要因です。「5つのサイン」を組織共通の言語とし、変化の波に溺れかけている従業員を早期にピックアップする仕組みを作ってください。
産業医からのワンポイントアドバイス
異動してきたばかりの部下に対して、最初の1ヶ月は「成果」よりも「適応(馴染むこと)」を目標に設定してあげてください。それだけで、メンタル不調のリスクはぐっと下がります。
参考文献
・厚生労働省. 職場における心の健康づくり〜労働者の心の健康の保持増進のための指針〜
コラム一覧に戻る