「麻疹(はしか)」は子どもの病気、または過去の病気だと思っていませんか?
近年、渡航者増加や渡航歴のある日本人からの国内感染事例が散発しており、成人であっても油断できません。
麻疹は極めて感染力が強く、オフィス内で1人でも発症者が出た場合、瞬く間に業務が停止してしまうリスクを秘めています。
今回は、最麻疹の驚異的な感染力と企業が今すぐ取り組むべき水際対策について解説します。
麻疹ウイルスの最大の恐ろしさは、その感染力の強さにあります。
新型コロナウイルスやインフルエンザが主に「飛沫感染」であるのに対し、麻疹は「空気感染」を起こします。
空気感染は、同じ空間にいるだけで感染してしまうリスクがあり、免疫がない人が麻疹ウイルスに曝露した場合ほぼ100%の確率で発症します。
初期症状は発熱や咳など風邪に似ていますが、やがて高熱と全身の発疹が現れ、肺炎や脳炎などの重篤な合併症を引き起こすこともあります。
麻疹には特効薬がないため、発症を防ぐ唯一かつ最強の手段はワクチンを接種することです。
・95%以上の発症予防効果:海外の研究によると、麻疹含有ワクチン(MMRワクチンなど)を1回接種した場合の有効性は約95%、2回接種した場合は約99%に達し、感染および発症を強力に防ぐことが確認されています。
・企業に潜む「ワクチン空白世代」:日本では、年代によってワクチンの定期接種の回数が異なります。30代後半から50代の多くは、過去に「1回しか接種していない」または「接種していない」世代(ワクチン空白世代)であり、十分な免疫を持っていない可能性があります。
感染による業務停止を防ぐため、人事ができるアクションを3つのステップで整理します。
① 従業員の「抗体保有状況」認識の促進
母子手帳の確認と抗体検査:従業員に対し、自身の母子手帳等で「麻疹にかかったことがあるか」「ワクチンを2回接種しているか」を確認するよう啓発します。従業員自身が、自身のワクチン接種状況を知り感染リスクがあるかどうか知ることは重要です。
② ワクチン接種の効果を共有
麻疹の予防にはワクチン接種が効果的であることを共有します。麻疹に関するニュースを見ることはあっても、近くで発生しなければ他人事となっている人がほとんどです。正しい情報で危険性とワクチンの必要性を周知しましょう。
③ 発症・疑い時の「出勤停止ルール」の徹底
就業規則の整備:万が一従業員が麻疹と診断された、あるいは疑いがある場合の「出勤停止基準」を就業規則に明確に定め、社内に周知しておきましょう。少しでも疑わしい症状がある場合は、事前に医療機関に電話相談してから受診するよう指導することも二次感染を防ぐ鍵です。
麻疹は、手洗いやうがい等の通常の感染対策を容易にすり抜ける感染症です。しかし、ワクチンの接種歴の把握や正しい知識を得ることで、不測の事態にも予防をスムーズに行うことができます。出勤停止基準の策定など、企業の産業医と連携しながら体制を整え、強い組織づくりを進めていきましょう。
「自分は子どもの頃にかかった(気がする)」と思い込んでいる方は非常に多いです。しかし、記憶は曖昧なことが多く、別の発疹性疾患(風疹など)と勘違いしているケースも珍しくありません。「記憶に頼らず、まずは母子手帳でワクチン接種歴を確認してみよう」と、呼びかけてみてください。その一歩が、会社全体を危機から守ることに繋がります。
・Di Pietrantonj C, et al. “Vaccines for measles, mumps, rubella, and varicella in children.” Cochrane Database of Systematic Reviews. 2021;11:CD004407.
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