「ストレスチェック、義務だからとりあえず実施しているけれど、本当に意味があるの?」人事労務担当者の皆様から、こうしたお声をよく伺います。これまで努力義務だった50名未満の事業場においても、労働安全衛生法の一部改正により、3年以内(2028年頃)を目処として義務化されることが決まりました。
本記事では、この制度の本来の目的である「一次予防」の視点に立ち返り、従業員のメンタル不調を未然に防ぐための具体的な活用術についてわかりやすく解説します。
2025年に労働安全衛生法の一部改正が行われ、50名未満の小規模事業場に対するストレスチェックの義務化が明記されました。施行後3年以内(2028年頃まで)という猶予期間を確保した上での施行となります。
制度の対象が広がる中で、「義務だからやる」という受け身の姿勢ではなく、「どのように実施すればより効果的に組織の健康を守れるか」という視点で、改めて制度の目的とポイントを押さえておくことが大切です。
「気づき」が不調リスクを下げる
ストレスチェックは、うつ病などの病気を見つけるための「診断ツール」ではありません。最大の目的は、従業員本人が自分のストレス状態にいち早く気づき、自ら対処(セルフケア)を行う「一次予防」にあります。
・「気づき」とセルフケアの促進:ストレスの原因(ストレッサー)を本人が認識し、それに対する適切な対処法(コーピング)を身につけることは、心理的苦痛を軽減し精神疾患の発症リスクを有意に下げることが研究結果から示されています。
・客観視がもたらす防御効果:結果が本人に返却された際、「あ、自分は今、仕事の量でストレスを感じているんだ」と客観視できること自体が、自身のメンタルヘルスを守るための重要な第一歩となります。
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「一次予防」をしっかりと機能させるためには、全従業員が安心して正直に回答できる環境作りと、集団分析の正しい活用が不可欠です。
① 集団分析を「個人のセルフケア」支援に活かす
環境整備の副産物としての活用:多くの企業が集団分析(部署ごとの傾向)の改善に注力しがちですが、集団分析はあくまで個人のセルフケアを効果的にするための環境整備と捉えるべきです。個人の気づきを促しても職場環境が過酷では限界があるため、「個人のセルフケアを妨げている要因を取り除く」という優先順位で活用することが制度を形骸化させない秘訣です。
② 不利益な扱いの禁止を明文化する
受検率と安心感の向上:「正直に答えると評価に響くのでは」という不安を取り除くため、「結果によって不利益な評価を受けることは絶対にない」と、実施前にしっかりとアナウンスし、受検しやすい環境を整えましょう。
③ 動画などで「受けるメリット」を伝える
自分の健康のためというメッセージ:「会社のため」ではなく「自分自身の健康のため」の検査であることを、専門家の言葉や動画を通じて伝えることで、受検への前向きな動機づけに繋がります。
50名未満の義務化を単なるコスト増や業務負担と捉えるのは非常にもったいないことです。ストレスチェックを、従業員一人ひとりが「自分の心と対話する時間」として定着させ、組織全体のメンタル不調を未然に防ぐ土壌を作り上げていきましょう。体制構築にお悩みの際は、ぜひ専門家である産業医にご相談ください。
ストレスチェックの結果が返ってきた後、従業員が「あぁ、やっぱり疲れているな」と感じた時に、そっとセルフケアのヒント(ストレッチや良質な睡眠のコツなど)を提供できるような社内の仕組みを整えてみてください。「気づき」の直後に「具体的なアクション」へと自然に繋がることで、一次予防の効果は最大化されます。人事の皆様からの温かいサポートが、従業員の心を軽くします。
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▼【動画解説】
・Richardson KM, Rothstein HR. Effects of occupational stress management programs: a meta-analysis. J Occup Health Psychol. 2008;13(1):69-93
・厚生労働省. 小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル
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