「ストレスチェック、義務だからとりあえず実施しているけれど、本当に意味があるの?」 人事労務担当者の皆様から、こうしたお声をよく伺います。特に、これまで努力義務だった50名未満の事業場においても、2025年5月の労働安全衛生法の改正により、3年以内(2028年頃)を目処として義務化されることが決まりました。
今回は、この制度の本来の目的である「一次予防」の視点に立ち返り、従業員のメンタル不調を未然に防ぐための活用術を解説します。
2025年に労働安全衛生法の改正が行われ、50名未満の小規模事業所での義務化の推進が明記されました。
・施行後3年以内:猶予期間(2028年頃まで)を確保した上で施行

引用:労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律 厚生労働省
「義務だからやる」という姿勢ではなく、「どのようにすることでより効果的に実施できるか」という姿勢で、改めてストレスチェックの目的とポイントを抑えることが大切です。
ストレスチェックは、病気を見つけるための「診断」ではありません。最大の目的は、従業員本人が自分のストレス状態にいち早く気づき、自ら対処(セルフケア)を行う「一次予防」にあります。
ストレスの原因(ストレッサー)を本人が認識し、それに対する適切な対処法(コーピング)を身につけることは、心理的苦痛を軽減し、うつ病などの発症リスクを有意に下げることが様々な研究から示されています。
ストレスチェックの結果が本人に返却された際、「あ、自分は今、仕事の量でストレスを感じているんだ」と客観視できること自体が、メンタルヘルスを守るための第一歩なのです。
多くの企業が「集団分析(部署ごとの傾向)」に注力しがちですが、集団分析はあくまで「個人のセルフケア」をより効果的にするための環境整備と捉えるべきです。個人の気づきを促しても、職場環境があまりに過酷ではセルフケアにも限界があります。
この優先順位を間違えないことが、制度を形骸化させない秘訣です。
「一次予防」を機能させるためには、全従業員が正直に回答できる環境作りが不可欠です。
▼【社内周知用】ストレスチェックの正しい活用法を産業医が解説
https://youtu.be/JoQf_s7uPRg?si=iPVIhXO6ZZdY5B4o
50名未満の義務化を、単なるコスト増と捉えるのはもったいないことです。ストレスチェックを、従業員一人ひとりが「自分の心と対話する時間」として定着させる。そのための土壌作りこそが、人事労務の皆様の重要なミッションです。
産業医からのワンポイントアドバイス
ストレスチェックの結果が返ってきた後、従業員が「あぁ、疲れてるな」と思った時に、そっとセルフケアのヒント(ストレッチや睡眠のコツなど)を提供できるような仕組みを整えてみてください。「気づき」の直後に「具体的なアクション」が繋がることで、一次予防の効果は最大化されます。
参考文献
・Richardson KM, Rothstein HR. Effects of occupational stress management programs: a meta-analysis. J Occup Health Psychol. 2008.
・厚生労働省 小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル
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