「女性活躍推進」という言葉が定着して久しいですが、現場では「急な欠勤」や「パフォーマンスのムラ」に頭を悩ませている人事担当者の方も少なくありません。
実は随伴症状(PMS)や更年期といった女性特有の健康課題による経済損失は、日本全体で年間約3.4兆円にものぼることが、経済産業省の試算(2024年)で明らかになっています。

引用:女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について 経済産業省
今回は、企業の生産性に直結する「女性の健康と経営課題」について、企業が取るべき現実的な対策を解説します。
女性の健康課題が企業に与える損失は、欠勤(アブセンティーズム)だけではありません。より深刻なのは、「出勤はしているが不調により業務効率が著しく低下している状態(プレゼンティーイズム)」です。経済産業省の試算によれば、月経随伴症状(生理痛やPMS)による労働損失のうち、約7割がこのプレゼンティーイズムによるものとされています。従業員がデスクに座っていても、実際には本来のパフォーマンスを発揮できていない「見えないコスト」が、日々発生している可能性があります。
月経痛やPMSで生活に支障を感じている女性は約7割に達し、そのうち15%(約7人に1人)は日常生活が困難なほどの強い不調を抱えています。
・経済損失(月経随伴症):年間約0.6兆円
・主な症状:イライラ、集中力の欠如、激しい腹痛、頭痛など。
特に若手〜中堅層の主戦力であるこの世代において、月に一度、数日間にわたってパフォーマンスが30〜50%低下することは、組織にとって極めて大きな機会損失です。
40〜50代の女性リーダー層を襲うのが、女性ホルモンの急激な変動や減少による更年期障害です。
・経済損失(更年期症状):年間約1.9兆円
・更年期離職のリスク:不調を誰にも相談できず、責任感の強さから「これ以上迷惑をかけられない」と離職を選んでしまうベテラン社員も中にはいるかもしれません。経験豊富なマネジメント層の離職は、採用・育成コストを考慮すると、企業にとって大きな損失となりえます。
「我慢」を美徳とする文化を脱却し、エビデンスに基づく支援を構築しましょう。
① ラインケア(管理職教育)の徹底
女性特有の不調は外見からは分かりません。管理職が「個人差があること」を正しく理解し、不調のサイン(ミスの増加、表情の変化)に気づく体制を作ることが、離職防止の第一歩です。
② 柔軟な働き方の選択肢(テレワーク・時間単位休)
月経痛や更年期の症状(ほてり、動悸、倦怠感)には波があります。「どうしても辛い数時間だけ横になれる」テレワークや、時間単位の休暇制度は、プレゼンティーイズムを最小限に抑えるための有効なセーフティネットとなります。
③ 産業医・専門家への相談ルートの確立
「婦人科へ行くほどではない」と放置する従業員がいた場合は、産業医面談を勧めてみましょう。面談を通じて就業の工夫で対応可能なのか、受診をするべきかなど適切な助言が得られます。
女性の健康課題を解消することで、人材の定着、生産性の向上が図られます。「個人の悩み」を「組織の力」に変える。これこそが、これからの人事労務に求められる戦略的な視点です。
女性特有の課題を扱う際、男性管理職から「デリケートな問題だから触れない方がいい」という声を聞くことがあります。 しかし、放置することが優しさではありません。人事担当者の皆様からは、「体調に波があるのは生理的な現象であり、それを前提にどう成果を出すかを一緒に考えよう」というフラットな姿勢を現場に伝えてあげてください。その「理解がある」という心理的安全性こそが、最大のサポートになります。
・経済産業省. 「女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について」
・ 厚生労働省. 健康日本21(第三次)と女性の健康
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